「もらい火」で自宅が被害を受けたとき、「自分は悪くないのに補償されるの?」と不安になる方は少なくありません。実は、日本では隣家に賠償を求められないケースが大半で、自分の火災保険で備えることが鉄則です。本記事では、失火責任法の仕組みから補償の範囲、申請の流れ、実際の支払い事例まで、知らないと損するポイントをわかりやすく解説します。
はじめに|「もらい火」は保険で直せる?
隣家など他人の火災が原因で自宅が燃えてしまう「もらい火」。自分に過失がないのに被害を受けた場合、「補償はしてもらえるのか」と不安になる人は多いでしょう。実は、日本では失火責任法の影響により、火元に賠償を求められないケースがほとんどです。そのため、自分自身の火災保険で原状回復を図ることが現実的な対応となります。
結論:相手の賠償に頼らず、自分の火災保険で原状回復が基本
火災の原因が自分でなくても、重大な過失がない限り火元に賠償責任は発生しません。つまり、もらい火による損害は基本的に自分の火災保険で補償を受けるしかないのです。建物や家財の修理・再購入など、被害の大きさに応じた補償が受けられるため、契約内容を確認し備えておくことが重要です。
もらい火・類焼・延焼・近隣トラブルの違い
- もらい火:他人の火災が自宅に燃え移ること
- 類焼:自宅から他人の建物へ被害を与えること
- 延焼:同一火災が複数の建物へ広がる状態
これらを正しく理解しておくことで、トラブル時の対応がスムーズになります。
失火責任法のキホンを3分で
もらい火に関するトラブルを理解するうえで、まず知っておくべきなのが「失火責任法」です。これは、火事を起こした人に重大な過失がない限り、被害者に対して賠償責任を負わなくてもよいとする日本独自の法律です。このため、たとえ隣家が原因で自宅が燃えてしまっても、相手に補償を求められないケースが大半となっています。
なぜ「相手の過失が明白でない限り賠償請求が難しい」のか
失火責任法は「善意の失火者を過度に責めない」という考え方が根底にあり、故意や重大な過失がない限り賠償責任を問えません。例えば調理中の不注意など日常的な原因での火災では、ほとんどの場合、相手から補償を受けることはできません。
重過失・放火・管理責任が問われるケースの考え方
ただし、明らかな怠慢や危険行為があった場合は別です。ストーブの消し忘れ、違法な配線放置、危険物の不適切な管理など、社会通念上の注意を大きく欠いた「重過失」が認められれば、賠償請求が成立する可能性があります。また、放火や管理者責任が問われるケースも例外として考えられます。
だからこそ「自分の保険」で備えるという考え方
このように、法律上は加害者に責任が及ばないことが多いため、「もらい火」による損害は自分の火災保険でカバーすることが前提になります。相手の賠償を待つよりも、自分の契約内容を把握し備えておくことが、被害時の最も現実的な対策といえるのです。
火災保険でカバーできるもの・できないもの
もらい火による損害は、火災保険の補償対象に含まれることが多く、建物の修復から家財の再購入まで幅広くカバーできます。ただし、すべてが対象になるわけではなく、補償範囲を正しく理解しておくことが大切です。契約内容や特約の有無によっても受け取れる保険金は大きく変わるため、事前確認が欠かせません。
建物と家財の補償範囲(焦げ・破損・煙・熱・すす・臭い)

火災そのものによる焼損だけでなく、煙や熱による壁や天井の変色、すすの付着、焦げ跡なども補償対象になります。また、家具や家電、衣類といった家財が損傷した場合も、家財補償を付けていれば保険金の支払いが受けられます。臭いや汚れといった一見軽微な被害も、証拠をしっかり残すことで対象になることがあります。
消火活動による水濡れ・破壊、搬出時の破損、仮住まい費用
火を消すための放水による水濡れや、消防隊の突入・破壊によるドアや窓の損傷も補償対象です。さらに、家財の搬出時に破損した場合や、一時的な仮住まいが必要になった際の費用も補償されることがあります。これらは「火災に付随する損害」として扱われるため、申請時にしっかり申告することが重要です。
対象外・注意例:経年劣化/美観目的の過剰修繕/同一原因の再発
当然ですが、火災とは関係のない傷みは補償の対象外です。また、必要以上の修繕やデザイン変更を伴う工事は認められません。同様の原因による再発被害も支払い対象外となることがあるため、申請時には損害の原因と範囲を明確にしておく必要があります。
類焼(他人の家へ被害を与える)への備えも慎重に
火災は注意を払っていても起きてしまうことがあります。反対に、近隣の家に被害を与えたときには、「類焼損害補償特約」「失火見舞金」に入っておくと安心です。
類焼損害補償特約・失火見舞金
代表的なものに「類焼損害特約」「失火見舞金」があり、自宅から出火して他人に損害を与えた場合の賠償を補償してくれます。「失火見舞金」は近隣へのお見舞いや関係修復にも役立つ費用が支払われる特約です。
予想外の出来事であっても、隣家に被害を与えてしまった場合、責任を感じる方も多いのではないでしょうか。損害賠償の請求はされなくても、賠償したい場合に、これらの特約に加入しておくと安心かもしれません。
請求の流れ|もらい火発生から保険金受取まで
もらい火による被害が発生した場合、落ち着いて正しい手順を踏むことが、スムーズな保険金受取につながります。現場対応から申請、調査、修繕までにはいくつかのステップがあり、どこかを疎かにすると減額や支払い遅延の原因になることもあります。流れを事前に理解しておくことで、いざという時にも慌てず対応できるでしょう。
発生直後:安全確保→写真・動画→消防・警察・管理会社連絡
まずは身の安全を最優先し、延焼や再燃の危険がないか確認します。次に消防や警察、賃貸の場合は管理会社にも連絡し、公的な記録を残しておくことが重要です。そのうえで、被害の状況をスマートフォンなどで撮影し、全体・部分・近接の写真や動画を残しておきましょう。
保険会社連絡〜調査:被害申告→必要書類→鑑定
状況が落ち着いたら、すぐに保険会社へ連絡して被害を報告します。事故状況報告書や被害写真、見積書などの必要書類を提出し、保険会社の鑑定人による現地調査を受けます。調査時には損害箇所の説明や経緯をしっかり伝えることが、査定の精度を高めるポイントです。
火災保険の申請には専門家を使うのも一つの手
もらい火による保険申請は自分でも行えますが、専門家に依頼するという選択肢もあります。どちらが良いかは状況によって異なり、被害の規模や時間的余裕、知識レベルなどを踏まえて判断することが重要です。それぞれのメリット・デメリットや注意点を理解しておくと、最適な選択がしやすくなります。
自力申請のメリット・デメリット(速度・工数・精度)
自分で申請する最大のメリットは手数料がかからず、費用負担を抑えられる点です。また、書類の内容や提出のタイミングを自分でコントロールできます。一方で、専門知識がないと書類不備や証拠不足で減額・否認されるリスクがあり、調査対応や見積手配などに多くの時間と手間がかかるのがデメリットです。
申請サポート活用のメリット・デメリット
被害が広範囲に及ぶ場合や、時間が取れない場合は専門業者への依頼が有効です。自分では気が付かない被害まで特定し、より多くの給付金を受け取ることも可能です。
FAQ|検索ユーザーの“最後のひっかかり”に答える
もらい火について調べる人の多くは、「ここが知りたい」という細かな疑問を抱えています。火災保険の仕組みや法律の原則を理解していても、いざという時に迷いやすいポイントがいくつかあります。ここでは、特に質問の多い3つのケースについて、わかりやすく答えていきます。
Q. 隣家の重過失があると言われた場合、相手に請求できる?
重過失が認められる場合は、相手方に賠償請求できる可能性があります。たとえば、危険とわかっていながら石油ストーブを放置したり、違法な配線を放置していた場合などが該当します。ただし、過失の立証は簡単ではないため、消防や警察の調査記録、専門家の意見などを証拠として集めることが重要です。
Q. 室内の臭い・微細な汚れだけでも支払われる?
一見軽微な被害でも、火災との因果関係が証明できれば補償対象になることがあります。実際、煙の臭いが強く残って壁紙の張り替えが必要になったケースや、すすの付着が確認されて補償が認められた事例もあります。拭き取り検査や専門業者の報告書など、目に見えない被害も“証拠化”する工夫がポイントです。
Q. 賃貸でもらい火に遭ったら、建物と家財はどう区分する?
賃貸住宅の場合、建物部分はオーナー(大家)が加入する火災保険で対応し、入居者は家財保険で自身の持ち物を守るのが基本です。壁や床などの建物部分に損害が出た場合は大家や管理会社へ連絡し、自分の家具や家電が被害を受けた場合は自分の家財保険に請求します。この区分を理解しておくと、申請時に混乱しにくくなります。
まとめ|相手に頼らず、あなたの保険で確実に守る
もらい火の被害は、自分に過失がなくても決して他人事ではありません。法律上、火元に賠償を求めるのが難しい以上、「自分の保険で自分の家を守る」という意識が何より大切です。正しい知識と準備があれば、突然の火災でも冷静に対応し、確実に補償を受け取ることができます。
また、もしもらい火にあい、自分でどうしたらよいか分らない場合は火災保険の申請サポートに頼るのも一つの手です。火災保険はもらい火を含めた火災以外にも自然災害による被害も補償されます。自分では気が付かない被害も特定できる可能性が高まります。
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