水濡れってどんな被害?もらえる保険金はこんなに種類がある

この記事を監修した弁護士

中野雅也弁護士

中野雅也 / 飯田橋法律事務所 代表弁護士

昭和58年1月  愛知県名古屋市生まれ
平成21年9月  司法試験合格
平成21年11月  最高裁判所司法研修所入所(63期)
平成22年12月 弁護士登録、東京弁護士会、登録番号42736 大江忠・田中豊法律事務所入所
令和2年7月    飯田橋法律事務所 設立
対外活動として、一般社団法人全国銀行協会あっせん委員会事務局付き弁護士に就任し、銀行と顧客との間での金融商品の販売等に関する紛争の調査を多数行ってきた。(平成29年4月~現任)

マイホームには、キッチン・トイレ・お風呂など、水回りの設備が多くあります。

水回りの排水管などが詰まったり壊れたりして、床や家財道具が水浸しになってしまうのが水濡れ事故です。

火災保険は、火事や台風などで受けた被害を補償しますが、水濡れ事故についてもきちんと補償が用意されているのをご存知でしょうか?

本記事では、水濡れ事故の事例を始め、もらえる保険金の種類、上手な保険金請求の方法などを解説します。

水濡れ事故は損害の範囲が広く、損害額も高額になりがちですから、補償内容についてしっかり確認しておきましょう。

この記事でわかること

・水漏れ被害の事例
・水漏れでもらえる保険について
・火災保険の水漏れの補償について

目次

マイホームで起きる水濡れ事故とは

マイホームにおける水濡れとは、給排水設備の事故などによるものを言います。

具体的には、給排水設備の破損や詰まりが原因で起こる漏水・放水、または、マンションの上の階に住む他人の部屋で起きた漏水・放水などによるものがあります。

ちなみに、給排水設備とは水道管や排水管だけでなく、洗濯機・食洗器・浄水器・温水洗浄便座といった末端設備も該当します。

ただし、エアコンは空調設備のため、水もれが起こっても給排水設備とは見なされません。

火災保険の水漏れ事故による支払件数の割合は、建物で20%、家財で19%を占めており、決して少なくないことが分かります。

参考:東京海上 トータルアシスト住まいの保険 パンフレットより。盗難・水濡れ等の支払件数割合。

水濡れ事故の事例

水漏れ事故の事例としては、洗濯機の排水口の目詰まりが原因で防水パンから水があふれたことによるものや、トイレの配水管の破損による漏水などがあります。

このような事故が起きてしまうと、壁や床の張替工事をする必要がありますので、修理費用として数万円~数十万円かかります。

水濡れ事故で困ることは、建物や家財が使い物にならなくなってしまうことです。

命に関わることは少ないですが、生活に直結するうえ、損害額も決して小さいとは言えませんので、リスクへの備えは必須です。

水濡れ事故にならないケース

火災保険の契約において、水濡れ事故にならず、保険金がもらえないケースとして以下のものがあります。

  1. そもそも水濡れ事故を補償対象外にしている場合
  2. 水濡れ事故の原因が、経年劣化や自然な摩耗の場合
  3. 窓やドアからの雨風の吹込みや雨漏りの場合
  4. 給排水設備ではなく、単にバケツの水をこぼしたような場合
  5. 水濡れによる被害の対象が動物、植物、現金、車両、業務用の家財の場合
  6. 水濡れ事故が、契約者・被保険者の故意、重大な過失、法令違反による場合
  7. 地震、噴火を原因とする場合
  8. 免責金額以下の損害の場合

一方で、水漏れ事故にはなりませんが、保険金の支払い対象になり得るケースもあります。

まず、床上浸水による水漏れです。集中豪雨などの自然災害が原因であれば、水災による事故として保険金の支払い対象になり得ます。ただし、水災補償を付けている場合に限ります。

次に、マイホームで火災が起こり、消火活動によって被った水濡れです。
この場合は、火災による事故として保険金の支払い対象になり得ます。

ちなみに、水濡れ事故の原因が給排水設備の破損・汚損の場合、壊れてしまった給排水設備自体の損害は「破損・汚損等」で補償されます。

水濡れでもらえるいろいろな保険金

火災保険でもらえる保険金は、基本補償である損害保険金を始め、いろいろな種類が用意されています。

損害保険金以外の保険金を費用保険金と言い、自動的にセットされるタイプや自由に選択できるオプションタイプなど、保険会社によって取り扱いはさまざまです。

損害保険金

火災保険の基本的な補償です。マイホームや家財が損害を受けた場合に修理費として支払われます。

災害緊急費用

事故が起きたマイホームや家財の、復旧のために発生した仮修理費用などを補償します。もらえる金額は、損害保険金の10%や限度額100万円などです。

残存物取片づけ費用保険金

修理によって発生したスクラップなどの残存物を搬出・廃棄するための費用です。もらえる金額は、損害保険金の10%や限度額100万円などです。保険会社によっては、基本保障である損害保険金としてまとめて支払ってもらえる場合もあります。

事故時諸費用保険金・臨時費用保険金

事故による思わぬ出費を補償するお見舞金です。もらえる金額は、損害保険金の10%~20%、または限度額100万円~300万円などです。

家財明記物件保険金

絵画・骨とう品・貴金属など高価な家財で、1個または1組の価格が30万円以上のものが損害を被った場合、通常は30万円までしか補償されません。

しかし、家財明記物件特約をセットすることで、1個または1組100万円まで、あるいは明記物件全体で1,000万円までなどとすることができるようになります。

なお、現金は明記物件とすることはできず、水濡れの損害を受けても補償の対象にはなりません。
火災保険において現金の損害が補償されるのは、盗難によるものの場合のみだからです。

賃貸物件の水濡れ事故もカバーしてもらえる

賃貸住宅に住んでいる場合、水濡れ事故が原因で借り物である戸室に損害を与えてしまうと、大家さんや他の住人に対して損害賠償責任が発生するケースがあります。

火災保険では、このようなケースに備えて次のような補償がついています。

借家人賠償責任保険金(入居者賠償責任保険金)・借用戸室修理費用保険金

賃貸住宅に住んでいて、その借りている戸室に対して水漏れにより破損・汚損した場合、家主に対する損害賠償や修理費用として支払われる保険金です。

個人賠償責任保険金

賃貸住宅に住んでいて、隣や階下の入居者の戸室に対して水漏れにより破損・汚損し、法律上の損害賠償責任を負った場合に支払われる保険金です。

なお、持ち家のマンションで階下の住人の戸室に水濡れ被害を与えてしまった場合も、個人賠償責任保険の補償対象です。

火災保険でカバーできる事故は幅広い

火災保険は、マイホームそのものはもちろん、家具家電といった家財全般に対する損害をカバーする保険です。

補償の対象になる事故は火事だけにとどまらず、台風などの自然災害や水災から、物体の飛来・衝突、盗難、破損・汚損と、非常に幅広いのです。

水濡れによる損害もカバー

火災保険では、水濡れに対する補償ももちろん用意されています。

保険会社によって、基本補償として必ず補償してもらえる場合と、オプションとして任意で選択する場合がありますので、契約する時はよく確認しましょう。

なお、水濡れ事故と水災事故は全くの別物です。

自然災害が原因となる水災の補償では、給排水設備の故障が原因となる水漏れは補償されませんので注意が必要です。

24時間365日使える付帯サービスで安心

火災保険には、家庭内で緊急性の高いトラブルが起きたときに利用できるサービスもあります。

例えば、トイレの詰まりなど水回りのトラブルや、玄関の鍵をなくしてしまったときの鍵開けなど、30分程度の一時的な応急修理を24時間365日いつでも無料で利用できるのです。

古いタイプの火災保険は水濡れが対象外の場合もあるので注意

昔の火災保険は、どの保険会社も同じ保険料率で同じ内容の商品を販売していました。

具体的には、保険料率が自由化された1998年までです。
自由化以降は、保険会社ごとに独自の火災保険を商品開発しています。

1998年までの古いタイプの火災保険は、住宅火災保険と住宅総合保険の2種類があります。
このうち住宅火災保険のほうは、保険料が安く抑えられている分、補償の範囲も狭くなっており、水濡れの補償がついていないことがあります。

1998年当時の火災保険の保険期間は、住宅ローンと同じ35年間ですから、現在でも古いタイプの火災保険に加入している人もいるでしょう。

マイホームの購入からずっと同じ火災保険のままという人は、補償を見直すことをおすすめします。

保険金をきちんともらうために

火災保険の請求のコツは、補償の対象かどうか自己判断しないことです。

もちろん、補償内容を事前にしっかり確認しておくことも重要ですが、火事や自然災害に該当しないから保障の対象外だと自己判断するのは勘違いのもとです。

火災保険は、家や家財が丸ごとダメになってしまう全損にならなければ何度でも請求できますし、自動車保険のように等級が下がって保険料が高くなることもありません。

水濡れなどの些細な損害であっても、まずは保険会社や代理店に問い合わせてみましょう。

査定結果に不服があるときは再審査請求できる

損害はあったものの、いざ保険金を請求してみたら、支払い対象外だったり減額されてしまったりというケースも、残念ながら起こり得ます。

このような場合、保険会社の判断について外部の有識者に再審査請求をすることができます。

2021年上半期では、火災保険だけで75件の再審査請求を行った保険会社もあります。

参照:あいおいニッセイ同和損保 不服審査お申し出制度ご利用状況、および保険金支払審査会審査状況

一人で請求するのは不安・・・そんなとき頼りになる申請サポート

保険金請求権は保険契約者の権利です。とはいえ、保険の知識がないのに高額な保険金を請求するのは勇気がいるものです。

このようなとき、火災保険申請サポートは非常に頼りになる存在です。

特に水濡れ事故の場合、水道管・排水管といった給排水設備の点検は、自力ではとても難しいものです。

申請サポート業者に頼めば、給排水設備の点検や事故原因の特定、資料の作成まで幅広く任せられますので、自分では気づかない被害まで見つけてもらえる可能性もあるのです。

まとめ

給排水設備を原因とする水濡れ事故は、火災保険の補償の対象になります

水濡れ事故が原因で保険金が支払われた件数は全体の2割ほどを占めており、損害金額も数万円~数十万円と高額なリスクです。

保険金には、基本補償である損害保険金以外にもいろいろな種類を特約で付けることができます。

持ち家だけでなく、賃貸住宅に損害を与えてしまった場合でも、きちんと補償されますので安心です。

ただし、古いタイプの火災保険では、水濡れはカバーされない場合があるので、契約している補償の範囲をしっかり確認しておきましょう。

保険金を請求するとき、保険の知識がなくて自信がない、勇気が出ないなど不安なときは、火災保険申請サポートを利用しましょう。

保険金が減額されたり、支払い対象外になったりしないよう、認定の確率を上げてもらえるメリットがあります。

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