台風など自然災害で収益物件や自宅が被災して、屋根からの雨漏りなど問題が発生してしまったら、火災保険を使って建物の修繕できないかを検討するでしょう。
インターネットで火災保険のことを調べると、保険会社から「自然災害」ではなく「経年劣化」による雨漏りと判断され、保険金が出なかった事例が多く報告されています。
ここで次のように思うでしょう。
「自然災害で被災したのに、経年劣化と判断されて保険金が下りないなんてこと、本当にあるのかな?」
経年劣化と判断されれば修繕にかかる費用は自己資金や家計から捻出することとなり、大きな負担を背負うことになります。
そして残念ながら自然災害で被災した事実があっても、経年劣化による損傷と判断されて保険金が下りないケースは存在します。
どうすれば適切に保険金を受け取ることができるのでしょうか、事例を交えながら解説します。
同時に、火災保険は制度を悪用して詐欺に用いられるケースもあります。
こういった、火災保険を申請するときの注意点も解説するので、最後まで読んでみてくださいね。
この記事でわかること
・自然災害による火災保険の申請方法
・自然災害と経年劣化の違い
・火災保険申請の際の注意点
火災保険で自然災害の被災を申請する手順
最初に、火災保険の請求はどのように行い誰が自然災害・経年劣化を判断するのか、手続きの流れを確認してみましょう。
自然災害による被災~保険金受領までの道のり
- 保険会社へ被害発生の連絡・被災状況写真の撮影
- 修理業者への見積もり依頼
- 申請書類・損害箇所の写真等の準備
- 保険会社による被害状況調査
- 保険金の支払い~工事
自然災害を原因として雨漏りや損傷を認識したら、すぐに保険代理店か各社の受付センターに連絡します。
損傷の原因や被災状況を聞かれますので正確に答えることが大事です。
被害発生時に絶対にしなければならないことは「被災状況の写真を複数枚撮影」することです。
遠景・近景・異なる角度で撮影すれば被災状況が明確になり、保険会社に申請するときに自然災害に由来するものという説明がしやすくなります。
また、雨漏りは台風や大雨が去ったあとは止まってしまうことが多く、水が流れている場面などタイムリーな写真を撮影しておくことが被災の認定に欠かせません。
自然災害が去ってからすぐに修理業者に見積もり依頼を行います。
大きな災害になるほど施工業者は不足するため、身の安全を確保したらすぐに連絡して日程を確保しましょう。
このため被災を受ける前から、実績のある相談できる業者を1~2社ピックアップしておくとスムーズに動くことができます。
施工予定の業者から見積もり書をもらい、保険会社に申請するための書類や写真を送付します。
申請書が受理されると、保険会社から損害保険登録鑑定人(以下「鑑定人」と言います。)と呼ばれる専門家が派遣され被災状況の調査を行います。
被災時の状況について聞かれるので、事前に被災した日時や状況を整理してメモを残しておくとスムーズに調査が完了します。
申請内容に問題がなければ保険会社から保険金支払の通知があるので、申請者が保険金の額や保険対象物の了承を行えば、保険金が指定口座に支払われます。
見積もりを取った業者に修理依頼をして工事に入りましょう。
自然災害と経年劣化を判断する「鑑定人」
損害を受けた箇所が、自然災害によるものか経年劣化によるものかを判断するのは「鑑定人」と呼ばれる専門家です。
被害状況を見て、何が原因で損傷したのかを確認します。
鑑定人は保険会社に対して、いつ・何が原因で・どういった被災が生じたのかを報告する必要があります。
このため、被災した日時や状況、写真や動画といった動かぬ証拠をしっかりと準備しておくことで、鑑定人も自然災害として認定しやすくなります。
そもそも、被害状況調査が行われる前の申請段階で十分な写真・状況説明資料を準備しておけば、鑑定人の調査が不要になり、自然災害として認定を受けられる可能性があり、スムーズに保険金を受け取ることができるかもしれません。
写真を中心とした状況証拠の整理は、火災保険の手続きに不可欠な要素といえるでしょう。
自然災害と経年劣化の被災例を確認しよう
被災から火災保険の受取までの流れを確認したところで、自然災害による損傷と経年劣化による損傷の違いを確認しましょう。
自然災害は台風などの強風・雹(ひょう)・霰(あられ)・雪の落下など風災・雹災・雪災。豪雨による洪水や高潮、土砂崩れといった水災が対象となります。
地震による建物倒壊や火災は、火災保険の対象外となり特約で加入する地震保険で補償されるため注意しましょう。
対して経年劣化による損傷は、長年の使用で部材が劣化し機能の低下から生じるものです。
それぞれ具体例を交えて解説します。
自然災害の被災例
最初に自然災害が原因で火災保険として認められる場合の具体例を見てみましょう。
事例1:「強風で瓦屋根が飛んでいった」
瓦屋根は火災保険の対象になりやすい種類の屋根です。
近年の瓦は釘で屋根に固定され、さらに隣の瓦同士が噛み合っているため強風でも外れにくい構造になっています。
一方で旧来の方法で施工した瓦屋根は釘による固定を行っていない場合もあり、強い風でズレや剥がれが生じることがあります。
台風後など屋根を見てズレなどの損傷が確認できれば、火災保険の対象となるでしょう。
事例2:「強風が原因でテレビアンテナや物置が倒れた」
強風が原因でテレビアンテナや物置など、建物に付帯するものが被害を受けた場合も火災保険の対処となります。
ほかにもカーポートやブロック塀など、建物に付帯して動かさない前提のものが対象になります。
注意すべきは保険契約締結後に物置などを増設した場合です。
火災保険契約時の評価額に算入されていないため保険の対象外となる場合があります。
現地調査の際にはいつ設置されたのかを確認されることがあるので、答えられるように購入時の資料などを準備しておきましょう。
事例3:「大粒の雹が降ってきた」
雹(ひょう)・霰(あられ)による被害も火災保険の対象です。
大粒の雹が飛来し、ベランダや窓ガラス、外壁などが破壊されれば雹災として火災保険の対象になるでしょう。
雹はゴルフボールほどの大きさになることもあり、生成される上空から速度を早めながら落下するため直撃するとかなりの衝撃を受けることになります。
一方で一定時間が経過すると融解してしまいその場に残らないため、降っている様子や被災直後の写真・動画があると火災保険の対象として認められる可能性が高くなります。
日時をしっかり記録しておき、気象情報と照合しておくのもよいでしょう。
事例4:「屋根への積雪で屋根・雨どいが被害を受けた」
火災保険は雪災も保険の対象としているので、積雪に由来する被害でも請求が可能です。
例えば家屋の屋根に積雪があり、屋根瓦や雨どいにゆがみが生じた場合があげられます。
降り積もった雪が原因でカーポートの柱が折れてしまった場合なども保険の対象です。
遭遇する可能性は低いですが、雪崩による建物被害も火災保険の対象となります。
事例5:「豪雨による洪水で被害を受けた」
豪雨災害が発生して家屋が被災したときも火災保険の対象となります。
一方で浸水した範囲までが補償の対象となるので、部分的に保険の適用外として否認される場合もあります。
浸水範囲が明確に分かるように、水災でも状況説明用の写真を複数撮影することが求められます。
経年劣化の被災例
次に経年劣化と判断されて、申請内容が否認されてしまう事例を確認しましょう。
事例1:「屋根からの雨漏りが火災保険対象外となった」
屋根からの雨漏りを理由に火災保険を申請して、否認される事例は多くあります。
その理由は自然災害に由来するものか、経年劣化に由来するものか判断が難しいからです。
具体的な経年劣化の事例として、屋根に生じるサビや、コケが原因で水が滞留して浸水する場合があります。
事例2:「壁の継ぎ目からの雨漏りが火災保険対象外となった」
壁のサイディングの継ぎ目から雨漏りが起きることがありますが、この場合も否認されるケースが見られます。
住宅の壁に用いられることの多いサイディングは、サイディング同士の隙間を埋めるためにシーリング材が用いられます。
シーリング材の寿命は長くて10年程度で、シーリング材が劣化した状況で壁に雨が当たると雨漏りが発生することがあります。
自然災害か経年劣化か迷ってしまったときは
ここまで自然災害で火災保険を利用するケース、経年劣化で申請が否認されるケースを確認しました。
実際に申請を行うときに困るのは「自然災害か経年劣化か判断がつかない」場合です。
迷ったときはどうすればよいのか確認してみましょう。
経年劣化が進行していた箇所が被災したとき
自然災害か経年劣化か迷いやすい事例として「元々経年劣化が進行していた箇所が被災した」場合があります。
結論からいうと、経年劣化が進行していた箇所が自然災害で被災した場合は火災保険の対象となり、保険金を受け取ることができます。
判断がつきにくい場合も具体例を交えて見てみましょう。
事例1:「経年劣化で風の影響を受けやすくなっていた屋根」
釘で止められている屋根でも、年数が経過すると釘にサビが生じて膨張し、浮きが出ることがあります。
部分的に浮いている屋根は風の影響を受けやすく、吹き上がるような風を受けると容易に飛ぶ場合があります。
このような状態で台風などの強風を受けて被災した場合でも、火災保険の対象になるので迷ったらとりあえず申請を行ってみましょう。
事例2:「雨漏りによる経年劣化箇所の存在」
豪雨による雨漏りも申請してよいか迷ってしまうことがあります。
雨漏りの原因の多くは経年劣化や施工不良が原因で発生するからです。
とはいえ、雨漏りが発生したときに経年劣化と決めつけるのは早とちりで、実は屋根の一部が被災している場合もあり、とりあえず申請してみる姿勢は大事です。
それでも申請すべきか迷ったら、専門の業者に依頼すると申請の可否を無料で相談することもできます。
火災保険の不正請求をしてしまわないように注意
申請すべきかどうか判断がつかないときに注意してほしいことは、不正請求を行わないよう意識することです。
経年劣化であると分かっているのに申請を行うと、虚偽の申請として詐欺を指摘される可能性があります。
安心して頂きたいのは、経年劣化か自然災害か判断がつかない場合にとりあえず申請してみることは問題ないということです。
判断が微妙な場合は申請をしてみて、鑑定人の判断に任せればよいのです。
問題になるのは悪質な業者に手引きを受けて、経年劣化と知っていながら申請してしまうことです。
台風のあとなど、詐欺目的の申請をそそのかすチラシが入ることがあるので、書かれている情報をよく調べて、詐欺に加担しないようにしましょう。
また、万一申請が通ったとしても悪質な業者は相場より高い手数料を取る場合もあるので後々後悔につながるかもしれません。
気をつけるべきことは、すぐに契約を行わないことです。
悪意のある業者は契約を急かすことが多いですが、契約の内容・自分が持っている保険の内容・申請箇所の具合をしっかり把握したうえで依頼するかどうか決めましょう。
また、突然玄関先に訪問され無料の点検を勧める業者もいますが、よほど信頼できる場合でないと立ち入らせない方がよいでしょう。
業者の中には点検と称して、自ら屋根や壁を破損させ被災状況を演出する業者もいるからです。
経年劣化でなくても火災保険が使用できないことも
ここまで、自然災害と経年劣化による被害の事例を見てきましたが、実は経年劣化でなくても火災保険の給付金がおりない場合があります。
「経年劣化には充分注意して申請したのに火災保険がおりなかった」なんてことにならないように、こちらも合わせて把握しておきましょう。
主な内容は以下の通りです。
- 故意や過失による損害の場合
- 損害額が免責金額以下の場合
- 自然災害による被害を受けて3年以上経過している場合
- リフォーム会社などの施工不良による損害の場合
故意や過失による損害の場合
故意や過失の損害は、自然災害による被害でないためもちろん火災保険の補償対象ではありません。
保険金欲しさに自作自演で損害を出して申請する方が一定数いるようですが、虚偽の申請は鑑定人に必ずと言って良いほど見抜かれますし、最悪の場合、罪に問われる事もあるので絶対にやめましょう。
損害額が免責金額以下の場合
火災保険は損害額が免責金額以上でないと補償対象になりません。
免責金額の設定は契約内容によっても違うため、万が一に備え、一度ご自身の保険内容は確認しておきましょう。
自然災害による被害を受けて3年以上経過している場合
火災保険の補償は自然災害の被害が発生してから3年以内という請求期限があります。
被害発生から3年を超える場合、経年劣化でなくても火災保険はおりませんので注意しましょう。
自分では気づいていない部分に被害がでていることもありますので気になる場合は早めに申請サポート業者に調査を依頼しましょう。
>>火災保険の申請期限はいつまで?申請できるケースや手続き方法を解説!
リフォーム会社などの施工不良による損害の場合
施工不良が原因の場合は火災保険では補償されません。
この場合、施工業者に補償してもらうためリフォーム会社などに相談しましょう。
火災保険の申請で不安を感じたらプロに任せよう
火災保険は経年劣化が発生している箇所を対象にして申請することができません。
一方で、被害が自然災害によるものか経年劣化によるものかを判断するのは経験の少ない素人には難しく、申請してよいか迷ってしまうこともあるでしょう。
こういった場合は火災保険申請サポートを使うことを検討しましょう。
火災保険の申請をサポートするプロは多くの現場を見ており、被災箇所が自然災害によるものか経年劣化によるものかを判断することができます。
また、適切な申請書の書き方や写真準備の方法を指導してもらうことができ、認定率のアップ、保険金額の増額につながることもあります。
プロレバでは無料で現地調査を行い、被災箇所が自然災害によるものか経年劣化によるものかアドバイスをしています。
申請する方針となった場合は書類の作成から交渉まで一括してサポートし、適切に保険金を受け取れるようお支えします。
経年劣化かも、迷ってしまった場合はお気軽に弊社までご相談ください。