火災保険を使うデメリットはなに?給付金の使い道や請求時の注意点も解説

この記事を監修した弁護士

中野雅也弁護士

中野雅也 / 飯田橋法律事務所 代表弁護士

昭和58年1月  愛知県名古屋市生まれ
平成21年9月  司法試験合格
平成21年11月  最高裁判所司法研修所入所(63期)
平成22年12月 弁護士登録、東京弁護士会、登録番号42736 大江忠・田中豊法律事務所入所
令和2年7月    飯田橋法律事務所 設立
対外活動として、一般社団法人全国銀行協会あっせん委員会事務局付き弁護士に就任し、銀行と顧客との間での金融商品の販売等に関する紛争の調査を多数行ってきた。(平成29年4月~現任)

ほとんどの人が加入している火災保険ですが、いざ火災などで建物の損害が生じても、火災保険の使用に躊躇する人も少なくありません。

自動車保険は使用すると保険料が値上がりするなどのデメリットがあることから「火災保険にも使うデメリットがあるのでは?」と、考えてしまう人もいます。

この記事では、火災保険のデメリットの有無や、給付金請求における注意点を解説します。もしもの時に、火災保険を適切に利用できるように、内容をおさえておきましょう。

この記事でわかること

火災保険を使う際のデメリットは存在するのか
火災保険の給付金を申請する際の注意点
・火災保険を使用しないデメリットの方が大きい

目次

火災保険で給付金をもらってもデメリットはない

実は、火災保険は自動車保険と異なり、使用する上で特にデメリットはありません。

火災保険は、給付金をもらったとしても保険料があがる、しばらく給付金を請求できなくなるなどのデメリットはありません。

給付金の使途も限定されないので、基本的には保険の対象となる修復箇所や建て替え需要などが発生したら、積極的に請求しましょう。

給付金をもらうことで保険料が上がることはない

自動車保険は等級制を採っていて、事故などで自動車保険を使用すると等級が下がることで保険料が値上がりするケースが多いです。

このイメージから火災保険も給付金をもらった後は保険料が値上がりすると懸念している人も少なくありません。

しかし、火災保険にはこのような等級は存在せず、給付金を受け取ったからといって保険料が値上がりするような条項もないので、給付金を受け取れる状況になったら、躊躇せずに請求することをおすすめします。

給付金の使い道は自由

火災保険は、建物の破損など保険で規定されている一定の要件を満たせば、その状況と契約内容に応じて給付金を受け取ることができます。

この給付金は必ずしも破損箇所の修復に使用する必要はなく、使い道は自由です。

ただし、将来同じ箇所に被害が及んだ場合に、改めて火災保険の給付金を受け取れるように、給付金請求の根拠となった破損箇所については必要最低限の修理はしておくことをおすすめします。

そのうえで、給付金の残りの部分は、契約者が自由に使途を決めることが可能です。

余った給付金の使い道

火災保険の給付金は損害の修復に発生した実費を支給するわけではないため、修復に対応しても給付金が余ってしまうケースも少なくありません。

例えば、次のような用途でうまく給付金を活用する人も多数います。

  • 住宅ローンの返済
  • 教育資金、老後資金としての貯蓄
  • 旅行や趣味、娯楽

住宅関連で発生した資金ということで、同じ住宅関連の借金である住宅ローンの支払いに充てるという人は多いです。

完済時期を早めたり、月々の負担を減らしたりできるため、より家計管理が楽になります。

すぐには使わず貯蓄に充てる人も。教育資金や老後資金など、必要になる時期や金額がある程度定まっている貯蓄に回せば、目標を達成しやすくなるでしょう。

家計に余裕があるならば、旅行や特定の趣味などに使用してしまうことも可能。ある程度まとまった金額が残った場合はいつもより贅沢することもできます。

建物の損害が大きい場合には、修復対応に追われて心身とも疲労する人も多いので、残った資金くらいは好きなことに使用してリフレッシュするのもよいでしょう。

1回の請求額が保険金額の80%に達しない限り何度でも請求可能

給付金を請求すると一定期間請求できなくなるのでは、と不安に思う人もいますが心配は無用です。

火災保険は給付金の請求回数に制限がないので、将来のリスクに備えて今は請求しないという判断をする必要はありません。

ただし、建物の同じ箇所で複数回給付金を請求する場合は、以前の請求時に修復が適切に行われていることが条件です。

そのため、給付金が支給されたら、まずは破損箇所の修復を必要最低限の範囲で行なっておくことをおすすめします。

火災保険の給付金を請求するときの注意点

火災保険の給付金請求にはデメリットはありませんが、いくつか注意しておきたいポイントはあります。
あらかじめ理解しておけば、想定外の事態に陥って困ることもなくなるでしょう。

保険金額の80%以上の給付金額になると契約終了に

一回の給付金の請求額が保険金額の80%に達すると、保険契約は終了となります。

これは80%を超えるということは、実質全損と同等であるとみなされて、保険の対象となっている物件自体がなくなったと判断されるためです。

ただし、通常の請求でこの要件に達することはあまりありません。

万が一80%に達してしまいそうな時は、保険の対象物件が重大な損害を受けているはずなので、むしろ積極的に火災保険を活用して修復した方がよいでしょう。

物件の修復が完了して、正常な状態になれば、改めて火災保険に入ることは可能なので、保険契約が終了してしまいそうでも、躊躇せずに修復を進めることをおすすめします。

給付金の受け取りまでに日数がかかる

急を要するケースが多いので、一日でも早く欲しい給付金ですが、受け取りまでには一定の日数がかかります。

これは、保険会社が被害状況を調査したうえで、適正な給付金額を決めるプロセスが存在するためです。

30日前後を見ておけば概ね大丈夫ですが、多くの家屋が被災した大規模災害の場合や、被害状況が大きい場合などは調査に時間がかかるケースも想定されます。

そのため、一旦は自費で修復するリスクも想定したうえで、日頃より最低限の蓄えを持っておいた方がよいでしょう。

給付金が受け取れないリスクも

給付金は請求すれば必ず受け取れるものではなく、契約内容や、保険会社の調査内容によっては断られる場合も。

具体的には、次のようなケースで給付金が受け取れないリスクがあるので注意しましょう。

  • 免責金額を下回っている
  • 補償対象外の被害である
  • 経年劣化によるものである
  • 故意・過失によるものである
  • 保険会社が定める基準を満たしていない

詳しく解説していきます。

免責金額を下回っている

多くの火災保険には免責金額が設定されています。

免責金額とは自己負担しなければならない被害の限度額で、この金額をこえるような被害でなければ、給付金を受け取ることはできません。

申請した結果、免責金額に達しないと判断をされても問題はありません。

従って、免責金額に達していると判断してもらえるか微妙な場合も、一応給付金を請求してみてよいですが、給付金を受け取れないリスクについてはあらかじめ留意しておきましょう。

補償対象外の被害である

火災保険は、建物を基本としつつ、オプションで家財への損害や、台風などの自然災害もしくは、突発的な被害など、火災以外の被害が補償対象になるものがあります。

しかし、これらのオプションを付与していない場合は、補償対象に含まれない被害を根拠に請求しても、給付金は受け取れません。

給付金を受け取れる可能性を高くするには、補償範囲を広くする必要がありますが、今度は保険料が高くなります。

自分にとってどこまでを保険で賄うべきか、慎重に判断のうえ、適切な補償を付与しましょう。

経年劣化によるものである

経年劣化とは時間がたつことで品質が低下すること。
特段の災害や事故などがなくとも、物件は時間が経てば汚れや破損などが徐々に増えていきます。こうした経年劣化による被害を根拠としても給付金は受け取れませんので注意しましょう。

故意・過失によるものである

故意や重大な過失による被害は基本的に対象外なので、注意が必要です。

もし一度給付金を受け取った案件について、後になって故意・過失を隠蔽して保険金を受け取ったことが発覚すると、損害賠償を請求されるリスクもあります。

かえって金銭負担が増大するリスクにもなりますので、保険会社の調査には誠実に対応することが大切です。

保険会社が定める基準を満たしていない

保険会社はそれぞれ、給付金を支給する損害基準を定めています。

給付金の請求があると、保険会社は該当物件の損害状況を調査。もしそこで、基準を満たしていないことが判明すれば、給付金は支給されません。

軽微な被害の場合には、自己負担せざるを得なくなるケースもあることを抑えておきましょう。

火災保険は使わないことによるデメリットの方が大きい

火災保険は、給付金を申請しないデメリットの方が大きいといえます。

被害を放置しておくと現金を受け取るせっかくの機会を逃してしまうからです。

しかし、実際には、自分の被害が給付対象であることに気づかずに、放置してしまうケースも少なくありません。

ここからは、火災保険を使わないデメリットについて解説します。

火災保険を使わないデメリット

・被害に遭ってから3年で請求権がなくなる
・思わぬ被害が給付対象なのに、気づかず放置してしまう人も多い

被害に遭ってから3年で請求権がなくなる

火災保険は、被害が実際に発生してから3年経つと時効となり、請求権がなくなります。

また、時間が経つと保険会社の被害状況の調査も難航するため、給付まで時間がかかったり、最悪給付されないリスクもあります。

基本的に被害を放置しておくメリットはないので、給付金請求に該当する被害を受けた場合には、速やかに請求準備を始めることをおすすめします。

思わぬ被害が給付対象なのに、気づかず放置してしまう人も多い

火災保険という名前がついているために「火災による被害でなければ給付金は支給されない」と誤解している人は少なくありません。

具体的に請求可能な被害は加入している保険やオプションの付与状況によってことなりますが、特約なども含めると火災以外の被害でも意外に給付対象に入っているケースはしばしば存在します。

加入している火災保険の特約やオプションにもよりますが、火災による被害だけでなく、風災・雪災などの自然災害による被害が補償範囲となるケースも少なくありません。

また、特約で突然のトラブルや事故が一部補償される保険もあります。

あらかじめ自分が加入する保険の給付対象を理解したうえで、みすみす給付金を受け取る機会を逃すことのないよう、注意しましょう。

こんな被害でも火災保険が使える!過去の請求事例

一例として、火災以外で実際に給付金を受け取れる可能性が高い事例をいくつか紹介します。

台風によって屋根が壊れてしまった

火災保険には風災補償が付与されているケースが少なくありません。台風による屋根の破損は、台風の風による被害の一種とみることができるため、風災補償がついている火災保険では、被害が免責金額を上回るようであれば、補償を受けることが可能です。

積雪で雨樋が壊れてしまった

風災に加えて雪災補償がついている保険も。この場合は、積雪に伴う家屋や家財へ被害を補償してもらえる可能性があります。積雪による雨樋破損はまさに雪災に該当するので、補償が付与されていれば給付金を受け取れるでしょう。

家具の移動中に誤って壁を傷つけてしまった

重大ではない過失や事故で損害を受けた場合に給付金が受け取れる特約が付与されている場合があります。適用範囲が広い保険もあり、このように明らかに火災とは関係なく、かつ自身の過失によるものでも、特約により給付金を受け取れるケースもあるのです。

火災保険を使うか迷ったら申請サポートを受けよう

火災保険は基本的に給付金を請求するデメリットはありません。保険対象の物件などで損害が生じた際には、ためらわずに請求手続きを進めましょう。

一方で不慣れな保険手続きでは、希望通り請求を受けられないのではないかと不安な方も少なくないでしょう。そんな方には火災保険の申請サポートを利用するのがおすすめです。特に火災保険調査人が調査を行うプロレバなら、被害状況に応じた適切な給付金申請をサポートします。不慣れな方でもスムーズに給付金の申請を進められるでしょう。

全国対応・最短即日対応を行っておりますので、まずはご相談ください。

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