火災保険は火災以外にも台風や落雷、雹(ひょう)などの自然災害による家屋の損傷も補償されます。火災保険の給付金の使い道は損傷した屋根や壁、庭木の倒木などを修理するためのものですが、給付金の使い道に制限はないので外壁塗装に使用することが可能です。
補償内容や給付金の仕組みは複雑であまり認知されていないため、補償が受けられるのにそれを利用していない人は多いです。
この記事は、火災保険の給付される仕組みを解説し、給付金を外壁塗装に使用する際の注意点をお伝えします。
外壁塗装に火災保険は条件付きで適用可能
火災保険の給付金を外壁塗装に使用するには、6つの条件を全て満たしている必要があります。
外壁塗装に火災保険が使える条件は以下の6つです。
- 自然災害による損傷であること
- 被災から3年以上経過していないこと
- 損傷が経年劣化によるものでないこと
- 故意に破損したものでないこと
- 施工不良による損傷でないこと
- 修理にかかる費用が免責金額を上回っていること
屋根や外壁などの損傷に支払われた火災保険の給付金は、使い道が自由なので外壁塗装に使用できます。
自然災害による損傷であること
自然災害による家屋や家財の損傷は火災保険の対象です。火災保険は台風による屋根の損傷や雹による外壁の陥没、落雷による異常電圧の発生で故障した家電などを補償します。
火災保険の補償を受けるには、損傷が自然災害が原因であることを証明する必要があります。
また、外壁塗装をするためという直接的な理由で、火災保険の給付金はおりません。あくまで、外壁など自宅に自然災害による被害があることが前提です。
被災から3年以上経過していないこと
火災保険は被災から3年を経過すると、時効になることが保険法で定められています。3年を過ぎると給付金の請求はできません。このため、火災保険は早めの申請をおすすめします。
被災後すぐに火災保険の給付金申請をする方が、補償の認定を受ける点でメリットがあります。台風などの自然災害が理由で屋根が損傷した場合は、被災直後だと損傷の原因が明確なため申請が認められやすいです。
また、大きな災害のあとは火災保険の請求が急増し保険会社の対応に時間がかかるので、申請が早いに越したことはありません。
損傷が経年劣化によるものでないこと
経年劣化による住宅の破損は火災保険の対象外です。住宅は築年数が経過するごとに老朽化します。老朽化によって発生した損傷は火災や自然災害と違ってあらかじめ予測できるため、火災保険の補償は受けられません。
火災保険の給付金は、予期せぬ災害や事故による被害を補償するために支給されます。
それでも、自然災害や突発的な事故による家屋の破損を修理するために支給された給付金を、経年劣化に対応するための外壁塗装に使用することは可能です。
ただし、経年劣化と自然災害による損傷の区別は難しいため、専門家の判断が必要になります。
故意に破損したものでないこと
当然ですが、火災保険請求を目的に故意に破損した場合は給付金はおりません。それどころか、わざと破壊して給付金を騙しとる行為は詐欺罪にあたります。
「タダで外壁塗装ができるから、破損箇所を装って火災保険を申請しましょう」と悪徳業者から詐欺を持ちかけられた場合は、毅然とした態度で断ってください。
施工不良による被害でないこと
建築当初からの施工不良が原因で雨漏りなどが発生した場合は、火災保険の適用を受けられません。また、リフォーム時に施工業者が誤って破損したことによる不具合も補償の対象外です。
新築10年以内の場合は、住宅品質確保法により売主に瑕疵担保責任が義務付けられています。施工に問題があって損傷が見つかった場合は、販売した会社に問い合わせましょう。
修理にかかる費用が免責金額を上回っていること
火災保険の給付を受ける場合、修理にかかる費用が免責額を上回っていることが必要です。
免責のタイプは2種類あり、火災保険の加入時に決められています。
免責のタイプには、あらかじめ決められた金額を超えた分の給付金が受け取れる免責型と損害額が20万円以上の場合に支払われるフランチャイズ型があります。
火災保険の認定を受けても、免責額を超えていないと給付は受けられません。
免責型 | あらかじめ決められた免責金額を超えた分の給付金が支払われる |
フランチャイズ型 | 損害額が20万円以上の場合、全額支払われる |
火災保険申請の手順
火災保険の給付金で外壁塗装をする場合は、自然災害による家屋の損傷を申請する必要があります。
自然災害などの被害で屋根などが破損したときの火災保険の申請手順は以下の通りです。
- 住宅の被害状況の確認
- 火災保険会社に連絡
- 必要書類を提出
- 火災保険会社の実地調査
- 給付金の入金
- 修理会社に依頼
1.住宅の被害状況の確認
自然災害などで住宅が破損した場合は、修理会社に依頼して被害箇所の特定と修理費用の見積りを依頼します。
そのとき、被害箇所の写真の撮影も依頼しておくと、その後の申請がすがスムーズにすすみます。
写真撮影ののポイントは以下の通りです。
- 表札などが写っている建物が特定できる写真
- 建物全体と被害箇所が同時に写っている写真
- 被害の状況がよくわかる写真
2.保険会社に連絡する
保険会社に連絡する場合は保険証券に記載されている申請窓口に連絡します。
申請窓口では家屋の被害が発生して、給付金の申請がしたい旨を伝えてください。
また、以下の内容が答えられるように事前に準備します。
- 証券番号
- 被災した日時
- 損傷の状況・原因
保険会社に連絡すると、郵送で申請に必要な書類の記入用紙が送られてきます。
3.必要書類を提出する
火災保険の給付金の申請には以下の書類を作成して提出する必要があります。
申請に必要な書類は以下の通りです。
- 保険証券
- 給付金申請書
- 事故証明説明書
- 修繕見積書
- 罹災証明書
- 被害箇所の写真
- 建物の登記謄本
書類には保険会社が指定する用紙に記入するものや修理会社に依頼して作成してもらうものなど種類が多いです。不備があると受理されないので、慎重に記入しなければいけません。
書類が受理されると保険会社は審査に入ります。
4.保険会社の実地調査
申請金額が100万円を超える場合や申請内容に疑問がある場合は、保険会社は損害保険登録鑑定人を派遣して、申請が正しく行われているかを実地調査します。鑑定人は直接目視で被害箇所を確認したり、被災したときの状況や被害箇所についてヒアリングしたりして調査を行います。
鑑定人のヒアリング調査では被害の原因などを説明して納得してもらう必要があり、建物について詳しくない一般の人にとって難易度の高い内容です。
ヒアリングの受け答えに自信がない場合は、建物や火災保険に詳しい人に変わって受けてもらうことも可能です。近年、火災保険の不正請求が増加傾向にあるため、実地調査は厳格化されています。調査に備え、被害状況を詳しく記録しておくことが重要です。
5.給付金の入金
火災保険の審査が通過すると給付金が入金されます。原則、給付金は申請から30日以内に支払われます。
手にした給付金の使用制限はありません。屋根や外壁修理のために支払われた給付金でも、外壁塗装の代金にあてられます。また、火災保険は給付金を受けたからといって、自動車の任意保険のように保険料は上がりません。さらに、火災保険は被害にあえば何度でも申請が可能です。
ただし、給付を受けた箇所を修理することなく次の災害で被害が拡大しても、その部分の火災保険は認定されません。
給付金を該当箇所の修繕以外に使う場合は、それを理解した上で行ってください。
6.施工会社に依頼する
給付金が入金されたら、外壁塗装の施工会社に依頼します。
外壁塗装の施工会社との契約は必ず火災保険がおりてからにしてください。火災保険が振り込まれるまでは、給付金がいくらなのかわかりません。施工会社の中には給付金が入金される前に無理に契約を結ぼうとする悪質な会社があります。火災保険は申請しても必ず認定されるものではないので、給付金の入金前に無理に契約を結ぼうとするような悪徳業者の口車に乗らないようにしましょう。
外壁塗装を火災保険でまかなうデメリット
外壁塗装を火災保険の給付金でまかなうことはルール上問題ありませんが、デメリットがあります。
火災保険で外壁塗装する場合のデメリットを理解しておきましょう。
火災保険がおりたところを修繕しないと次の申請では給付されない
火災保険を外壁塗装に使用すると、損傷のあるところの修繕に給付金をあてることができません。火災保険の申請は何度でもすることができますが、給付金がおりた損傷箇所を修理しないままでいるとその部分に再び給付が認められることはないので注意してください。
個人で損傷箇所を見つけるのは難易度が高い
外壁塗装に火災保険の給付金を利用するためには、住宅の損傷箇所を発見する必要があります。
しかし、建物に詳しくない個人が、火災保険に請求可能な損傷箇所を探し出すのはかなり難しい作業です。損傷箇所が見つかっても、その被害を自然災害によるものだと証明する必要があります。
外壁塗装を火災保険でまかなうために、建物の専門知識がない人が損傷箇所を見つけるのは困難です。
火災保険で外壁塗装ができるという訪問営業には注意
外壁塗装の施工会社の中には、火災保険を利用して高額な施工費用の契約を取ろうとする悪徳業者がいます。外壁塗装の訪問営業で、火災保険の話題が出た場合は注意が必要です。
火災保険を悪用する外壁塗装の手口について解説します。
外壁塗装と火災保険の申請をセットにしている業者は詐欺の可能性が高い
外壁塗装と火災保険の申請代行を両方行う業者は詐欺の可能性が高いです。
外壁塗装業者が営業で訪れた際、「費用は火災保険でタダになる、火災保険の給付金申請の代行も一緒に引き受ける」といわれ高額な外壁塗装の契約をした。外壁塗装業者は住宅の破損箇所の修繕費の見積りを相場より高く保険会社に申請したが、保険会社から支払われた給付金は申請した金額よりも大幅に下回るものだった。しかし、高額な外壁塗装の費用はそのまま請求された。
外壁塗装業者が火災保険申請代行の両方を請け負う場合は詐欺を疑ってください。
また、火災保険の代行業者が施工業者を斡旋する場合も要注意です。
故意に損傷させ火災保険を請求する悪徳業者
外壁塗装の訪問営業をするの業者には、火災保険の給付金請求のために故意に住宅の一部を破壊して給付金を騙しとる詐欺をはたらくものがいます。
火災保険で外壁塗装の費用がまかなえると施工業者が訪れた。火災保険の給付金請求ができる傷んだ箇所があるかを調査するといって、屋根にのぼり見えないところで瓦を故意破壊した。悪徳業者は偽装した損傷箇所を保険会社に申請して、給付金で外壁塗装費用を支払わせた。火災保険の給付金は瓦の修理費用にはあてられず、結局、屋根瓦の修理費用が別途必要になった。
このような被害に合わないためには、施工業者を屋根にあがらせないことが重要です。誠実な会社が屋根を調査する場合、直接屋根にのぼることはありません。高所棒と呼ばれる屋根を調査する専用の道具を使って調べるのが一般的です。
また、いくら悪徳業者が被害箇所を偽造したからといって、申請は本人が行うものです。虚偽の申請を行った場合、詐欺の首謀者として疑いを持たれてしまう恐れがあります。死角に入って点検を始める業者がいたら、すぐに調査を断ってください。
火災保険の申請を外壁塗装の施工会社にまかせてはいけない
火災保険の申請と外壁塗装の施工の両方を同じ会社に任せるケースでトラブルが多く発生しています。申請と施工は全く関係のない会社に依頼してください。
火災保険申請と外壁塗装の施工は別の会社で行う
悪意のある業者は、火災保険の給付金が出る前に外壁塗装の契約を結ぼうとします。悪徳業者は契約を迫る際に、火災保険が多く支払われることを強調してきますが、実際に申請金額よりも少ない給付金しかおりないことがほとんどです。
このようなトラブルを避けるためにも、火災保険申請と外壁塗装はつながりのない別の会社に依頼しましょう。
火災保険の申請は火災保険申請サポートに依頼することを検討する
火災保険の申請は本人以外が行うことはできません。申請の全てを代行する行為は法律で禁止されています。
しかし、申請を行うのはあくまで本人で、申請行為を手助けする火災保険申請サポートは適法です。
火災保険申請サポート | 適法 | 被害箇所の調査や見積もり、書類作成のフォロー |
火災保険申請代行 | 違法 | 書類用紙の取り寄せ、記入、申請の代行 |
外壁塗装業者の中には、火災保険の申請代行も一緒にやりますといってセールスしている場合がありますが、火災保険の申請代行はそもそも違法なのでこのような業者は相手にしないでください。
火災保険申請サポートを上手に利用して給付金を最大化する
火災保険申請サポートは法律にのっとった適切な方法で、書類作成の相談に乗ったり、申請のやり方についてアドバイスしたりするサービスです。
また、個人では難しい建物の損傷箇所の調査・見積りを行います。火災保険申請サポートは建物の専門家であり火災保険のプロでもあるので、火災保険の請求可能な損傷を見逃しません。さらに、これまでの経験から認定可能なギリギリの金額で見積もりが出せるので、給付金を最大化できるのが特徴です。
火災保険で外壁塗装をする場合は火災保険申請サポートの力を借りることを検討しよう
火災保険は自然災害が原因の家屋の損傷を補償します。給付金の用途は自由なので、外壁塗装にあてることができます。
ところが、火災保険の給付金に使用制限がないことを逆手にとり、高額な外壁塗装を持ちかけてくる悪徳業者がいます。悪徳業者は故意に住宅を破壊して損傷箇所を偽造したり、高額な施工費用の契約を迫ったりします。
そのような悪徳業者の被害を防ぐために、訪問営業はできる限り相手にしないことが賢明です。また、火災保険の申請と外壁塗装の両方を請け負う業者は、詐欺の可能性が高いので注意してください。
トラブルを避けるために、外壁塗装の施工会社と独立している火災保険申請サポートの利用を検討してください。
火災保険申請サポートは法令を順守し給付金の請求の手助けを行っています。火災保険申請サポートは建物のプロが現地調査を行い見積りを出すため、損傷箇所の見落としがなく適正な見積り金額を算出します。
例えば、火災保険申請サポートのプロレバは、建造物にも高い専門性を有するスタッフが被害状況の把握や証拠の保全などを行ってくれます。万が一給付金受給に至らなかったときは報酬が発生しません。
給付金が受け取れるか不安な方でも、気軽に相談していただけます。火災保険の申請が必要なときは、ぜひ一度相談してください。